先生紹介

青木 淳一准教授

略歴
学部: 慶應義塾大学法学部法律学科(2000年卒業)
大学院:慶應義塾大学大学院法学研究科公法学専攻後期博士課程(2005年単位取得退学)

専攻領域
行政法・公益事業法

担当学科目
行政法・法学・研究会

また先生は法学部の生活指導の担当教授でもあります。
そのため、生徒のことにもとても気を配ってくださいます。

メッセージ

【担当者自己紹介
 学部時代は,皆さんと同じように,個別説明会に出席したり,オープンゼミを聴講したりといくつかのゼミをみてまわった結果,行政法が勉強したいと藤原淳一郎先生のゼミに入りました。
 その後,大学院へ進み,修士課程,後期博士課程と藤原門下で研究を続け,2005年4月,藤原先生のご厚意により塾法学部の専任講師に就任しました。2009年4月から准教授として今日に至っています。
普段は三田キャンパスで,学部3・4年生向けの「行政法総論」「行政作用法各論」の授業を受け持っています。日吉キャンパスへ法律学科の授業で出講する機会はあまりなく,皆さんには馴染みのない顔かもしれませんが,2011年度は「法の基礎」(6月17日),「法学情報処理」(9月30日)に出講しています。

【研究対象】
(1) ゼミの研究テーマ
 ゼミでは「行政法」を勉強します。一般的な体系をもとにするならば,行政法総論と行政救済法が中心となります。民事法に目を向けると,実体法=民法や商法と,手続法=民事訴訟法があって,学部の授業科目としてはさらに細かく分けられています。行政法も便宜上,授業科目として「行政法総論」と「行政救済法」があり,それぞれ実体法,手続法に分類できますが,行政法学はその垣根をほとんど意識せず,実体法,手続法をひと括りに議論します。詳細は授業に委ねますが,多岐にわたる論点が相互にリンクしているのです。

(2) 担当者の研究テーマ
 担当者自身の研究テーマは,「電気通信分野における政府規制と競争政策」です。電気通信のユニバーサルサービスについて,いくつかの論文にまとめています。また,あわせて,塾内機関紙『OPEN』2007年10月号,通信教育課程『三色旗』2008年6月号をご覧ください。固定電話や携帯電話の利用料金請求書をみると,「ユニバーサルサービス料」が請求されていますが,それに関する話題を紹介しています。
 このテーマをより広い範囲で捉えるならば,「公益事業に対する政府規制の在り方」です(「公益事業」の定義は難しいのですが,電気通信のほか,電力,ガス,水道,鉄道などのいわば「生活必需サービス」に関わる事業を思い浮かべてください)。さらにワクを広げると,経済活動と行政との関わりに焦点をあてた「経済行政法」となります。
 憲法上,本来自由が保障されている経済活動も,公衆衛生,環境保全,消費者保護,産業育成など,さまざま理由でもって多岐にわたる政府規制の網に覆われています。「経済行政法」学は,そのような経済活動に対する政府規制をめぐる法的諸問題を考察の対象とします。つまり,行政法の一般抽象理論を現実の個別具体的事象に即して詳細に論じる学問(行政作用法各論)です。
 検討対象が経済活動ということもあって,独占禁止法を中心とする「経済法」の議論は必要不可欠ですし,「(ミクロ)経済学」の研究も参照しなければなりません。最近注目の「法と経済学」も有意です。2011年秋からは,専修大学商学部の太田和博先生にお声掛けいただき,交通政策論・交通経済論の若手研究者らとともに,タクシー政策の研究プロジェクトに参加しています。ゼミの普段の勉強で,それらを取り上げることは予定していませんが,興味と意欲のある学生とはぜひ議論したいと思っています。

【行政法とは?】
(1) 「六法」に入れてもらえぬ行政法
 皆さん「六法」ということばはご存知でしょう。その「六法」のなかに,「行政法」は入っているでしょうか?
 では,あの分厚い二分冊の有斐閣『六法全書』を開いて,「行政法」に関する,あるいは「行政法」の領域で取り上げられる法律というのは,どのぐらいの割合を占めていると思いますか?
 実は,ごく一部の法律を除いて,ほとんどが「行政法」に関わる法律なのです。現在,我が国では1800程度の法律が制定されていますが,そのうちの少なくとも8割は「行政法」に関わる法律であるといわれています(2011年8月12日時点で,1853の法律(憲法を含む)があり,政令や省令まで含めると7617法令あります)。実に多くの法律が関わるのに,「六法」というメジャーなところには名前がありません。「行政法いろはカルタ」(!)によれば,「犬も歩けば行政法にあたる」のですが,「『六法』に入れてもらえぬ行政法」なのです。

(2) 「行政法」の世界に登場する,法律
 行政法に“関わる”法律は数多くあれど,「行政法」という三文字の題名の法典は,わが国に存在しません。
 行政活動を行うにあたって行政が事前に踏む手続について「行政手続法」,何らかの権利侵害を受けたり,財産的補償が必要な国民が救済を受けるための手続や要件を定めた「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償法」といったいくつかの統一法典は,確かに用意されています。
 でも,個々の行政活動は,無数にある個別実定法によります。例えば,住宅の建築については「建築基準法」,ごみの収集や処分については「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」,上下水道の利用については「水道法」「下水道法」,パスポートの発給については「旅券法」,運転免許については「道路交通法」,引越しに伴う転出・転入届や選挙人名簿の登録等で使われる住民票については「住民基本台帳法」,レストランの営業については「食品衛生法」・・・と,挙げればきりがないぐらい,様々な法律が関わってきます。
 このように,行政法は,ある特定の法律だけを対象とするのではなく,さまざまな行政活動をマナ板にのせて,その法的な仕組みや,適法性・適正性を検証するための原理・原則を抽出して組み上げたものといえます。

(3) 「行政法」っぽい(?)場面
 行政法の世界では,国や地方公共団体という行政活動の主体が当事者として登場する法律問題を考察対象とします。その行政活動は,今日の社会にあって実に多くの場面で活発に行われ,かつ役割も重要です。
 何かと話題の「規制緩和」(最近では,単純に緩和するだけではないため,「規制改革」と呼ぶことが多いでしょう)は,行政システムの透明性を高め,説明責任を明確にすると同時に,(民間の活用,市場の開放などによって)効率性の向上をも意図し,一定の成果を挙げています。他方,規制緩和の「負」の側面も浮き彫りになり(記憶に新しいところでは,列車脱線事故や,マンション耐震強度偽装事件,タクシー運賃の値上申請など),国民生活の安全を十分に確保するための立法や法改正も相次いでいます。
 政権交代を実現した民主党は,「脱官僚」「脱霞ヶ関」を掲げています。行政の活動が先行し,それが既定のものとしていつの間にか受け入れられてきた,という実態は少なくありません。政治主導にする,ということが意味するところは何か。その成果はいつ,どのように表れるのか。立法と行政の適切な関係を考えるきっかけとなるでしょう。このことは同時に,司法と行政の関係にも影響します。司法による行政統制は,より最適な解を導き出すか。行政事件訴訟法の改正の効果も徐々にあらわれ始めており,注目されます。
 このような現在進行形の素材を扱うとき,行政法には,法律学の重要要素であるところの「法解釈学」のみならず,立法,政策という要素も不可欠です。政策の実現とその見直しには,絶えず「現状の認識」「問題の発見」と「解決の模索」が繰り返されます。「問題発見能力」と「問題解決能力」が求められるという点で,いわゆる“リーガルマインド”の実践と言えるでしょう。

【活動方針】
 春学期は,教材として事例問題(既存の問題を拝借,あるいは新作問題)を用います。
 行政法の世界をひと通りみることを目的として,毎週2〜3つの事例問題を指定し,ゼミ当日に担当者との問答によって検討しています。いわゆるソクラテス・メソッドです。
 秋学期は,行政法に関するテーマを履修者自らが選び,調べ,ゼミの場で報告し,全員で議論します。事例問題も結局は「与えられた問題」にとどまりますが,秋学期はテーマを選ぶことから主体的に取り組んでもらいます。そして,必要かつ十分な情報を収集・分析し,適切な加工を施して発表用の資料を作り,プレゼンを行ってもらいます。2013年度から採り入れたこの方式は「プレ卒論」ともいえるもので,「現状の認識」「問題の発見」と「解決の模索」を繰り返します。
 来年度も,基本的な方針は例年どおりと考えています。
来年度も,基本的な方針は例年どおりと考えています。毎年,それまでの経験を踏まえて少しずつ改善・工夫しています。2年間とはいえ,就職活動や国家試験勉強等を考慮すれば,意外と短く,限られた期間です。付加価値を付ける機会をできるかぎり用意したい,そう思っています。
【課外活動】
 毎年2月ごろに春合宿を,8月ごろに夏合宿を行っています。
春合宿は1泊2日の予定で,入ゼミ予定の2年生にも参加していただきます。ゼミがどのように進められるのか,イメージをつかんでいただくための勉強会(本年度の司法試験予備試験の問題を検討します)を兼ねた顔合わせです。
 皆さんには,新学年度が始まる前に,春合宿に参加していただきます。ゼミがどのように進められるのか,イメージをつかんでいただくための勉強会(本年度の司法試験の問題を検討します)を兼ねた顔合わせです。
 夏合宿は2泊3日の予定で,英書講読やテーマ報告などの勉強会を中心に,観光などのレクリエーションも交えています。 また,法律学科ゼミナール委員会主催のソフトボール大会など,各種行事に参加しています。夏・春の合宿は参加必須ですが,それ以外はゼミ生の自主性に任せています。

【入会者への希望
 新学年度までに行政法をひと通り勉強しなければならない,などということはまったくありません。むしろ,日吉での憲法や民法をしっかり勉強してきてください。行政法はもちろん重要な科目ですが,応用的なところもあります。立派な家を建てるためにも,基礎工事を確実に入念に行ってきて欲しいのです。
 大学で法律を学んだというからには,「ある事象を前にして,何が問題かを見出し,その解決策を考える」スキルを身につけて欲しいと思っています。その訓練のためにゼミは最適の場でしょう。考えられうる多くの解決策を検討し,どれが現実にベストか,そしてその解決策を導くために説得力ある主張を展開できるか。教科書,体系書,判例集に載っている学説,判例などの「先人の知恵」は,ひとつの参考材料,あるいは問題解決のための数あるツールのひとつに過ぎません。むしろ必要なものは,あらゆる問題を探り出す「想像力」と,現実を見極める「バランス感覚」です。
 少人数で,しかも2年間はお付き合いするわけですから,日頃ゼミの時間にみているだけであっても,単に勉強のことだけでなく,その人の「ひととなり」が分かってきます。担当者としては,卒業後も生涯付き合えるゼミでありたいと願っています。

【選考について】
(1) 選考方法
 入会希望者に関する個人情報や志望理由等を書いていただく「入会希望者調書」と,面接によって選考します。また,現役ゼミ生との面談も受けていただきます。
 詳細な手続は,仮登録の結果をみて検討し,追ってゼミHP等で告知します。
 参考までに例年「入会希望者調書」で伺っている質問事項は,次のとおりです。

[質問A]あなたが研究会を選ぶにあたって,なぜ行政法なのか,なぜ当研究会なのか,その理由を教えてください。3・4学年の研究会活動にどのような姿勢で臨み,関わっていきたいか,あなたの意気込みも聞かせてください。

[質問B]あなたの将来の進路構想を聞かせてください(ここでの所信表明を約束していただくものではありません。現在,あなた自身が思い描いていることを述べてください)。

(2) 募集人数
 責任をもって指導できる人数が最適規模であると考えています。10名(最大でも12名)までが最も望ましいでしょう。そのぐらいならば,すぐに顔と名前を覚えられます。

【おわりに】
 傍からみれば,行政法は確かに“変わっている”かもしれません。@「行政法」という名前の法律がないので,拠りどころがなく,とっつきにくい。Aだから,まず法律を探すことから始めなければならず,それもいままで聞いたことがないようなものまで出てくる。B国民vs.行政という単純な二面的対立構造に収まらず,国民といっても多様な利害を抱えた多数の第三者が取り巻く環境の中で考える思考方法は,他の法律分野とは一味違った感覚を持つ必要がある。馴染みのない世界に対する抵抗感,そのイメージが先行してしまうのでしょう。
 でも逆に考えれば,たくさんの法律・制度が登場することは,常に新鮮味あふれ,旺盛な興味関心を満足させてくれるでしょう。ある意味で多くの当事者が存在し,その中で最適な解決策を導くためには,極めて世間的な常識と,バランス感覚が必要で,それは法律家に限らず,社会生活において身に着けておかなければならないことではないでしょうか。
 行政法の面白さはいずれ分かっていただけるとして,やはり,「行政法を勉強してみたい」学生に来てほしいと思っています。興味があることならば,好きなことならば,長続きします。勉強も同じです。ゼミを選ぶ基準は様々あるでしょうが,自分のやりたいことを第一に考えてください。
 ゼミは,私にとって,馴染みの顔がそろった「ホーム」です。安心して接することができます。そうであるからこそ,このゼミの門をたたいてくれた学生諸君の期待を裏切ってはいけない,そんな責任感も生まれます。